VALORANTのeスポーツ責任者を務めるLeo Faria氏は12月11日、競技シーンにおける2023年の総括と来年度以降の目標や計画を明らかにしました。主なポイントは以下。また記事から引用した文章を掲載しています。

  • VCT 2023 Masters Tokyoが行われた幕張メッセでの最後の2日間は、1日当たり8,000人を超える来場者数を記録。VCTにおける最多来場者数記録となった。
  • 2024年は中国リーグが開幕。中国最大規模のeスポーツチーム計10チームが参加を表明。
  • VCT AMERICAS 2024の開幕は2月16日、PACIFICは17日、EMEAは20日、CHINAは22日。各リーグで国際大会出場をかけたキックオフトーナメントが開幕。
  • VCT 2024 Masters Madridは各リーグからそれぞれ2チームの計8チームが出場。グループステージからプレイオフではなく、スイスステージからプレイオフに変更。
  • 問題視されている過密スケジュールは2025年から調整予定。年間の大会総数に変更は加えず、各大会の間隔を調整予定。シーズンの始まりを早め、終わりを遅らせることで、大会と大会の間に適度な休養を取れるように変更する。なお2024年は中国リーグのチームが準備の時間を取れるよう、従来同様の遅めのシーズンで開催。
  • パートナー制度はオーナーシップよりパートナーシップ、量より質を重視し、洗練されたハイレベルなリーグを作ることが目的だったが、この判断は正解だった。ZETA DIVISIONのロスター発表動画、BBL Esportsのオフラインウォッチパーティー、Sentinelsのオフシーズンイベントなどのコンテンツは非常に優れた取り組みだった。
  • VCT 2023 LOCK//INでは1,000万ドル(約14.6億円)を超えるスキン収益を各パートナーチームへ分配。また、Champinosの限定スキンは史上最多の売り上げを記録し、2,200万ドル(約32億円)以上の収益を分配した。全パートナーチームへ分配し、Championsまで勝ち進んだチームには第二の分配も支給した。
  • 2023年の総支給額は、2021年と2022年の2年間の合計を上回った3,300万ドル(約48億円)。各パートナーチームには100万ドル(約1.46億円)以上を分配した。また基本となる年俸や追加のインセンティブ報酬も支払われた。
  • 支給した各チームは、1,200万ドル近い金額を選手やコーチたちに支給した(平均で35%)。Riot Gamesからは合計で4,500万ドルの大会賞金も支払われており、そのうちの300万ドル以上が選手やコーチに分配された(平均で70%)。過去にスキン収益や賞金をチーム側が選手たちに支給しないといった問題があったが、きちんとした年俸や福利厚生に加えて、分配金があることでシーンの健全性を保っている。
  • 2024年にはチームのロゴやブランドを武器スキンやアイテムに落とし込んだ「VCTチームセット」をリリース。購入することで、チームを直接支援に。セットは2月のキックオフトーナメント直後から販売予定で、アセンション枠のチームも含め、全パートナーチームのアイテムが用意されている。

VCTよりコミュニティーの皆さまへ2023年末のご挨拶

皆さま、こんにちは!VCTチームを代表して、わたくしLeoがご挨拶申し上げます。

早くも終わりが近づきつつある2023年。ここで、コミュニティーの皆さまが力を結集させて成し遂げた今年の素晴らしい業績を振り返りたいと思います。

過去最高の成功を収めた1年

今年1年は、VALORANT eスポーツにとって文字どおり大変革の年でした。基礎を固めるための2年間を経て、VALORANTは2023年、とうとう完全な形でのスポーツとして始動したのです。言うなれば、VCTがベータ版を脱した年となりました。30のパートナーチームを新たに迎えて3つのインターナショナルリーグを立ち上げました。Challengersリーグからの昇格システムを初めて取り入れたほか、女性プレイヤーの活躍の場として世界各地でGame Changersの大会を50回以上開催。記憶に残る国際大会を4度にわたって主催し、「Premier」も正式リリースにこぎつけました。本当に、祝うべきことが多くあった1年でした。

3つのインターナショナルリーグは、初年から多くの成功を収めました。VCT Americasはアメリカ大陸において最大かつ最多視聴者数を誇るeスポーツに発展しただけではなく、ゲームシーンにおける最強の選手たちも生み出し、北アメリカ地域がついにeスポーツにおける世界王者の称号を勝ち取る一助となりました。VCT EMEAはシーズン開始直後から目を見張るような成長を遂げ、オールスターとでもいうべき面々の揃ったFNATICがVCTで史上初となる3冠達成にあと一歩のところまで迫るなど、素晴らしい物語の数々が生まれました。VCT Pacificも同地域におけるFPSゲームのリーグとして最も成功したリーグとなり、ソウルでの壮絶なプレイオフのイベントなど、記憶に残る数々の激戦を繰り広げ、期待に応えました。

また、国際大会の記録を次々と更新する年でもありました。2023年の国際イベント第1弾として、ブラジルのサンパウロにてLOCK//INを開催し、すべてのパートナーチームを招待。参加チーム数においてRiot史上最大のeスポーツイベントであり、開催期間中に打ち立てたVCTのイベントとして最多の150万人近くの最高視聴者数の記録は現在に至るまで破られていません。続いてVCTは東京へと会場を移し、アジアでは初開催となる大会は日本のコミュニティーに温かく迎えられました。会場の観客数は、幕張メッセでの最後の2日間に1日当たり8,000人を超える最多記録を更新し、こちらもいまだ破られぬまま。そして、遂にChampionsの開幕です。

Champions LAは、私たちが今までに取り組んできた中でも、飛びぬけて野心的なイベントでした。結果的に試合は大成功、ファンに愛される公式テーマソングをリリースし、LAを代表するような名所を訪れ、ゲームやスポーツ、そしてコミュニティーとVALORANTの文化が混然一体となったショーを開催することができました。Champions LAは過去最多の視聴者数を誇るVCTイベントとなり、最多視聴者数は180万人を記録しました。合計では、約950万人もの登録者がChampionsを視聴したと推定され、この上なく素晴らしい結果となりました。しかも、同じファンが複数回訪れた場合を重複して計算せず、この数字です。3つのインターナショナルリーグを代表する、4つの異なる地域のチームがトップ4に入るという、非常に競争力の拮抗した様子を示す素晴らしい大会となりました。世界王者の座を目指すEvil Geniusesの快進撃を観戦できるというのは特別な体験であり、今年チームに加入したばかりのDemon1や、女性として初めてチームをeスポーツの世界王者へと導いたPotterらの活躍は、中でも出色でした。

イベント全体がVALORANTコミュニティーへの愛があるからこそなせる業であり、私たちも非常に誇らしく思っています。ここで、ショーを成功へと導いたチームの苦労の一端をお見せする舞台裏映像をご紹介しましょう。

Champions後は、各チームやパートナーたちが世界中で40以上ものイベントを開催するオフシーズンへと突入しましたが、まだまだ1年は終わりではありません。ほんの数日前にも、ブラジルのサンパウロで開催されたGame Changersで勝利を収めた新たなる世界王者であり、meLやflorescentをはじめとした名選手の揃うオールスターチームShopify Rebellionへの表彰式を行ったばかりです。VALORANT史に残るTeam Liquidとの激戦を勝ち抜き、女性eスポーツイベントでの最多視聴者数記録を更新した王者への戴冠式と言ってもいいでしょう。

ミスや失敗もありましたが、今年も多くのことを学ぶことができました。これからも、皆さまからの貴重なフィードバックをお待ちしています。そのことを念頭に置いていただいたうえで、VCTの今後についてお話ししましょう。

今後について

Game Changersのこれまでの成功には、大変勇気づけられています。2022年の大会は女性eスポーツのトーナメントとして過去最多の視聴者数を達成し、2023年も期待を裏切らない結果となりました。しかし、女性が公平に競い合える場を作るという目標は、いまだ道半ばです。ここからは、彼女たちにChallengersやインターナショナルリーグへと進んでもらい、女性も男性も対等に一つの場で競い合える環境を築き上げるという目標に少しでも近づきたいと考えています。そこで、2024年にはプログラムの次なる段階を開始しようと計画しています。女性選手たちのためのGame Changersは引き続き開催する一方、選手たちが上を目指して移籍しやすい環境整備に力を入れ、女性選手たちがジェンダー混合のロスターに起用される際の摩擦の緩和を目指します。具体的には、プレイヤーレンタル制度や2Way プレイヤー制度などの導入、そして地域間での移籍規制ルールなどからのGame Changers選手たちの例外化など、ルールやポリシーの変更という形で、各チームや組織が選手たちに適切な機会を与えることを促進・奨励することを検討しています。

そうした選手層の開拓や発展のみならず、来年はChallengersに数多くの改革を実施したいと考えています。ファンにとってもっと楽しいものとするのはもちろん、トーナメントの運営側、各チーム、プロ選手たちにとってより持続可能なものにするための改革です。今年はAscensionsの影響で、Challengersリーグが早々に終幕を迎えてしまいました。これでは空白期間が生じ、チームや選手たちから競い合う機会を奪ってしまいます。2024年は、Ascensions前後の健全な休息期間を含む通年の競技予定カレンダーを新たに導入します。また、AscensionsはChampions後に開催日程が変更されます。そして最後に、Premierのチームを直接Challengersに昇格させる取り組みをはじめ、プロを志望する新人たちにキャリアパスを提供します。より詳しい情報は、来年の発表をお待ちください!

今年発表を行った通り、2024年はVCTに4番目のインターナショナルリーグとしてVCT CNが加わります。ここ数か月、我々は2022年の3つのリーグ開設の時と同様にチーム選定に懸命に取り組みました。来年の新リーグ開幕に合わせて参戦する10チームを、この場で発表させていただきたいと思います。中国における最大規模のeスポーツ組織も含まれており、中にはFPSゲームにおける強豪として名を馳せたチームや、VALORANTでの活躍でeスポーツ界における自分たちの名声を確立することを目指す新興のチームなどもいます。こうしたチームの活躍が国際的なVALORANT eスポーツの世界にどのような影響を与えてくれるのか、今から新リーグの幕開けが楽しみです。

2024年の目標としては他に、各大会の規模や内容が大きくなるのに合わせて年間のイベント予定の調整が難しくなる中、シーズンの進行をより良いものに設計しなおすことも挙げられます。2023年をトーナメントの開幕で始めたのは素晴らしい大成功だったと思っており、その点は今後も変わらず実施し続けたいと考えています。2月16日のAmericasに始まり、17日のPacific、20日のEMEA、22日のChinaと、各リーグでKickoffトーナメントが開催され、Masters Madridへの出場資格のかかった戦いが始まります。

世界大会を初めてスペインで開催できることは、我々にとっても大きな喜びです。3月8日から24日、激戦を勝ち抜いた8チームがMadrid Arenaに集い、シーズン最初の国際大会が開催されます。Mastersはスイスステージから始まり、恒例のダブルエリミネーションブラケットで終わる新たな大会形式が導入されます。チケットの発売開始は12月14日です!

最後に、この場をお借りして我々の2025年に向けての計画の一部をご紹介したいと思います。普段はそれほど先のことをお話しすることはあまりないのですが、今回は例外とさせていただきます。プロ選手たちの休息、各チームのロスター再編、ファンたちが再開を心待ちにするひと時、そういった時間を作るため、今までもオフシーズンの適切な期間については常に注意を払ってまいりました。しかし、そういった目的は一定程度達成できていたものの、年間予定にはいまだ改善の余地が残されていると思います。現行の日程では、2月から8月の予定が詰まっている一方、9月から1月は間が空きすぎています。スケジュールが多すぎる、または少なすぎることには弊害があります。そこで、年間の大会総数を増やしたりはせずに、各大会の間隔をより適切に調整することとしました。シーズンの始まりを早め、終わりを遅らせることで、各ステージやイベントの間に適度な期間をとれるようにしたのです。2024年は、VCT CNの新チームが準備の時間をとれるよう、まだ遅めのシーズン開始のままですが、2025年からは新たな日程で年間予定を立てていきます。より詳しい情報は、来年お伝えいたします。

持続可能なスポーツへ

今年はeスポーツをめぐる経済面での議論が多く巻き起こった一年でもありました。このレターもその話題で締めくくり、今後のVCTのあり方などをお話ししたいと思います。

スポーツとしてのVCTを設計するうえで、我々はまず基礎となる2本の柱を定めました。オーナーシップよりもパートナーシップを重視すること、量よりも質を重視することの2つです。洗練された内容のハイレベルなリーグを少数作り、合理的な数のチームが競い合う形とすることで、VALORANTにおける最高水準の激戦をファンが楽しめることを目指しました。結果的に、この判断は正しかったと思います。パートナーチームはいずれもトップレベルの活躍を見せ、競技を拡大していく助けとなる投資を行い、ファンの皆さまに素晴らしい体験を提供してくれています。ここで挙げておきたい優れた実例は枚挙に暇がありませんが、ZETAのロスター発表動画、BBLのトルコでの素晴らしいウォッチパーティー、先日のSentinelsのオフシーズンショーマッチなどの素晴らしいイベントは、個人的にも特に印象に残っています。

こうした注目度の高さは、Riotがeスポーツのコンテンツに大規模な投資を行える環境にもつながっています。eスポーツへの情熱を共有し、チームやプロ選手たちを応援してくれたファンの皆さまのおかげで、各チームに健全なビジネス環境を提供することができました。今年最初のLOCK//INセットも大成功をおさめ、各チームの合計で1,000万ドルを超える金額が分配されました。ChampionsカプセルはVALORANT史上最多の売り上げを記録し、2,200万ドル以上もの資金を分配できました。すべてのパートナーチームが分配分を獲得し、Championsまで勝ち進んだチームには第二の分配も用意され、シーズン最大のステージとしての意義がより深まったのです。

合計すると、今年1年間のファンの皆さまによる各チームのデジタルアイテムの購入金額は3,300万ドルを突破し、2021年と2022年の2年間の合計をも上回りました。各チームの平均金額は、100万ドルを超えた計算となります。基本となる年俸やRiotからの追加のインセンティブと相まって、各組織がスポーツへの投資を継続できる環境が整ったのです。

こうした成功の恩恵は、プロ選手たちにも大いに行き渡っています。今年のデジタルアイテムの売り上げ3,300万ドルから、各チームには1,200万ドル近い金額が選手やコーチたちに分配されています(平均で35%)。Riotからは合計で4,500万ドルの賞金も支払われており、そのうちの300万ドル以上が選手やコーチに分配されています(平均で70%)。きちんとした年俸や福利厚生に加えてそうした分配金があることで、VALORANTのプロ選手としての明るい将来を保障しています。

こうした実績を踏まえて我々は来年、新たに「VCTチームセット」を導入することを決定しました。これにより初めて、チームのブランドの銃スキンやグッズを装備して、応援しているチームをゲーム内で直接サポートできるようになります。これは我々にとっても新しい挑戦ですが、必ず成功に導くことができると確信しています。セットの発売は2月のKickoffトーナメント直後ぐらいから開始する予定で、それ以降はシーズンを通じて利用可能となります。VALORANT開発チームの懸命な努力のおかげで、最近昇格したAscensionsのチームを含め、インターナショナルリーグに所属するすべてのチームに銃スキンなどのフルセットが用意されています。これは、Ascensionsの意義を裏打ちし、すべてのチームに公平な利益をもたらすことにつながるものです。

Riot全体を代表して、素晴らしいコミュニティーを築き上げてくださった皆さまに心よりの感謝を申し上げます。皆さまが愛する方々と楽しい年末を過ごされ、最高の2024年を迎えられることを願っています!

11 コメント

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  1. ちゃんと金配ってるのに優勝して崩壊するチームがあるらしい

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    1. EGは組織自体が腐ってたから金とか関係無しに崩壊したよ…

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  2. チームスキン楽しみ

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  3. "女性が公平に競い合える場"とは。現行のVCTは男女問わず参加できて、公平に戦えますよ!"女性に下駄履かせる"の間違いでは?

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    1. 平等には戦えてるけど実力差ありすぎて公平には戦えてないぞ

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  4. 長い翻訳まとめサンキュー
    新形式に批判も多かったが成功して良かったな

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  5. 名指しでZETA褒められてんの凄いな

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  6. 東京でのMastersが最多入場者数記録したのは嬉しいね
    色々あったけど成功として捉えられてて良かった

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  7. ティア2になんて配分してたら最上位のパートナーの存続危ういし
    パートナーチームに集中的に資金入れるやり方は正解だね
    ディレクターがティア2は金儲けとしては成立しないのでよろしくって言ったの批判されてたけどあれは優しさやな

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  8. なんだかんだ言われてるけどtier2問題以外は大成功なんだな
    そのtier2もこれからpremier上がりのチームが増えてくると考えると金かける必要はない

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    1. 必要ないどころかプレミアからリーグへの導線を確固たるものにしたかったらtier2に金かけるのは不正解ですらある

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